あの子からの恩返し

出逢いは保健所の犬舎でした。

聡明で勇敢な性格と言われているジャーマンハンティングテリアの成犬、男の子です。

彼は猟犬として生きてきましたが、最初の家族が亡くなり、保健所へ…。

一目見て気に入ったお母さんが、家に連れて帰りました。

もう、6〜7歳なのでしょうか。少しずつ、少しずつ、心を開いてくれました。

特にお母さんが大好き。お母さんもお父さんも、少し過保護なくらい、大切にしました。

 

あの日…。予期せぬ出来事が。

ご連絡をいただき、迷いましたが、現地に向かうことにしました。「今夜は激しい雨になる。」降り出す前に、なんとか間に合うかな。状況を知っている方を探し出し、場所の確認を。そしてバスタオルなどを途中で購入し、向かいました。

よかった、まだ降ってこない。

ちょっと待っててね。今綺麗にしてあげるからね。

それからご家族と合流する直前、激しい雨が。

 

その翌日、お庭に咲いた色とりどりのお花とお手紙、大きなぬいぐるみは写真にして、いつものカリカリとクッキーを納め、旅の途中まで見送りました。

前日の雨があなたの行く道を洗ってくれたかのような、澄んだ空。

 

あれから数ヶ月。

あの子のお母さんから突然の電話。お話させてもらうのは初めてです。

「あの子が身代わりになってくれた…今はそう思いリバビリ頑張っています。」

 

あの日、保健所から連れ出してくれたお母さん。お家に慣れるまで、根気よく接してくれたお母さん。優しく甘えさせてくれたお母さん。

聡明で勇敢なあなただから、お母さんを守ることができたんだね。

間もなく、お母さんがお家に帰ってくるんだよ。お母さんの元気なお顔見て、声を聞いて…安心して休めるかな。

そしてまたいつか、逢えるといいね。

生まれてきてくれて、うちの子になってくれて

ありがとう。

 

 

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