突然部屋の外から仔猫の鳴き声。
〝ペット禁止〟のアパートの一室。10代の少女ふたりの生活に仔猫が加わりました。
なぜこのうちの前に捨てられたのか。
この数日前、「仔猫をもらって欲しい」と言われ断ったばかりでした。親猫の写真…サバシロちゃんと白猫ちゃんでした。なんてわかりやすい…。最終手段だったのでしょうか。
このまま放ってはおけない。少女ふたりは、猫と暮らしたことがなかったため戸惑いましたが、部屋に招き入れることに。ごはんは何を食べるのだろう?ミルク飲むのかなぁ?
今のようにネットで何でも調べられる時代ではありません。全くの無知。キッチンから鰹節とシーチキンの缶詰とミルクを出してきて、あげてみることに。
猫って歯が尖っていて怖いな。爪が怖いな。あまりこっちに来ないでほしいな。
「猫との生活」未知の世界!どうしたらいいのかさっぱり…!
はじめは恐る恐る接していました。
でも愛情がわくのに時間はかかりませんでした。
あんなに怖かった爪、なんてことない。可愛い。
こんなにあたたかくて、こんなに柔らかくて、こんなにも可愛い生き物がこの世に存在したんだね。
少女ふたりは早くから親元を離れ、10代の姉が妹の親代わりでした。同じだね。みんな捨てられっ子の保護っ子。
長い年月が過ぎました。
姉は嫁に行き、妹と猫が残りました。
出逢うべくして出逢ったのかな。少女たちにはこの子が必要で、この子にも親が必要だった。似た者同士が集まって、おだやかな幸せを噛み締めた日々。
ねえ、ぷうちゃん。キミは幸せだったかな?お母は幸せだったよ。出逢ってからずっとね。
キミがいたから乗り換えられたことがたくさんある。落ち込んだ時、寂しい夜、いつも一緒にいてくれたね。
〝絆〟ってあるんだね。
一心同体だった。ふたりはセットだったね。
ぷうが天使になり、寂しさがどうにもならなかったけれど、また、保護っ子が家族になったんだよ。
京都のあるおうちの庭に深夜投げ捨てられたおちび。避妊手術をしなかったために産まれた望まれなかった子。あちこちお引越しをし、この家に落ち着きました。ふたりとも、優しい子に育ちました。怖がりだし、「また捨てられるんじゃないか?」と必死の愛情アピールしたり。傷は残っているようだけれど、似た者同士、なかよく暮らしているよ。
ぷうちゃん。あのとき、うちを選んでくれてありがとうね。
キミがくれた幸せは一生物だよ。これからも忘れない。今お空にいるのか、私のところにいるのかわからないけれど。時々そばにいると感じるよ。
私を頼ってくれてありがとうね。